「仮面舞踏会?」

 

放課後、軍の任務がないとなればルルーシュは何かにつけてスザクをナナリーのいる自邸に誘った。最初は名誉ブリタニア人であり何かと面の割れている自分と近しいと、彼らに不都合がおこるのではと危惧し遠慮したが、ルルーシュはそんな自分を「この馬鹿が!」と一括し、更には「ナナリー手ずからお前のためにクッキーを焼くと今朝からはりきっていたんだぞ。その好意を踏み躙る気か」とナナリーを引き合いにだしては責めてくるものだから遂には根負けした。そういったわけで今日もスザクはサンルームのテラスで上等な紅茶と、ナナリー手作りのミントクッキーを頬張りながら午後の一時に興じていたのである。

「ええ、来週の金曜日に中等部であるんです。男子生徒は誰を誘うか、女子生徒はどんなドレスを着ていくかでみんなそわそわしているんですよ」

「くだらんな」

そう一蹴したのはルルーシュだった。スザクは剣呑な幼なじみの表情に、それも致し方ないかなと柔和な笑みを口元に称えているナナリーを見遣った。着飾ることはできてもナナリーの脚はステップを踏むことはできない。皆がダンスに興じているなか、ひとり壁の花と化しているであろうちいさな姿を思うとスザクの胸も鈍く痛んだ。

(きっと会場の誰よりも綺麗に踊るだろうに・・・そしてルルーシュは誇らしげにナナリーを見るんだ)

いつの日か踊れる日が来ればいい。そのとき自分が彼らの傍にいられるかはわからないけれども。

「ねぇ、スザクさん。いつの日か、わたしと一緒に踊ってくださいますか?」

「勿論だよ」

それが最期の約束だった。

 

 

 

 

「わたくしが討たねばなりません」

厳かに告げる声は悲愴な決意に満ちていた。

「ナナリー・ヴィ・ブリタニアとして、わたくしがルルーシュ・ヴィ・ブリタニアを討たねばならないのです」

開いた眸が見た世界は残酷でしかなく、少女が踊るのは戦場と言う名の舞台。こんな未来が欲しかったわけではないだろうに、然し今日に至る結果をつくりだしたのは紛れも無くかつての友で。スザクは少女のちいさなしあわせが、もう永遠に来ないことを知る。

「わたくしと踊ってくださいますか」

少女を守る覚悟はあった、けれども捧げる心がない。何故ならばスザクの心は唯一と定めた主のもので、彼女の死と共に永遠に失われたからだ。

「君がそれを望むのならば」

踊り続けよう、狂った世界で。

 

 

わたしとあなたが踊るとき

 

 

07/10/11

 

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