「おまえが女だったらよかったのに」

 

 

唇から散弾銃

 

 

ルルーシュは時たまおかしなことをいう。今日も晴天。目に眩しいくらいの青空のした、黒猫のように睛を細めて笑う男は、ほんとうにルルーシュなのだろうか。ぼくは時たま混乱する。彼がぼくに触れる指先の微妙な感覚に。頬を撫でられる、ふっと三日月のように口の端を歪めたルルーシュはやはりおかしなことをいった。

「そうしたら、俺のこどもを孕ませられるのに」

ひたりと支配者の睛をして、ぼくを見据える男はほんとうにルルーシュなのだろうか。ぼくはやはり混乱し、舌の根が乾いたかのようにうまく言葉を紡ぐことができない。ルルーシュはくつくつと咽喉で笑う。この場を支配しているのは彼だった。睫毛の震えさえわかるほどにふたりの距離が近づく。あっ、と思う間もなくキスをされ、ぼくは驚きに目を瞑った。かさついた皮膚。けれどもそれはすぐに潤いを増したものになる。ルルーシュの舌がぼくの唇を舐めたからだ。きもちわるい、とは思わない。けれどもこのままにさせていいわけがない。抗議の声をあげようと開いた唇の隙間をぬって、食むように接吻けられた。ディープキス、というんだろうこうゆうの。あつい舌が、蛇のように口腔を這いまわる。ぞわりとよくわからない感覚に背筋が震え、なす術もなく行為を甘受するだけ。吐息の逃がし方すらわからず、ようやく解放されたころには息があがっていた。

「なに、いまの」

「何って、キスも知らないのか」

「しってるけど」

それはぼくらの間で交わされるような行為じゃなかったはずだ。ルルーシュは唾液で濡れた唇をぺろりと舌で拭うと、悪戯が成功したこどものように笑った。

「別にいいだろう。キスぐらい」

「え、よくないきがするんだけど。キスってふつうすきなことするものだろう」

「そうだな。そして俺はお前のことが好きだから、別にしたってかまわないだろう」

 

 

ほんとうは孕ませたいんだけどな、そうニヒルに笑う目の前の男はほんとうにルルーシュなのだろうか。ぼくはやはりその疑問から逃げられず、返す言葉ももたないのであった。

 

 

06/12/30

 

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