「できるならば殺したくはない。けれどもそうやってしか世界を変えることができないのならばそうするしかないじゃないか。夢に見るよ。自分が殺した人々の怨嗟の声。どんな崇高な理念を掲げたってやっていることはただの大量殺戮だ。わかってはいるさ、わかっているからこそもう止まることなんかできやしない。流した血の数に見合うだけの結果を出さなければいったい僕は何のために、」

ハレルヤ―――祈るように縋るように呟かれるその名が誰のものなのか、ロックオンは知らない。そもそもロックオンは志を同じくする仲間であるはずのアレルヤことすら何ひとつ知らない。眼下に散らばる無数の星屑を虚ろに片目で見据えながら、アレルヤは続ける。

「あんなおぞましいことを」

本来ならば戦いに向かない性質なのだろう。それは戦場とは別の日常におけるアレルヤの言動、雰囲気を見ていれば自ずと知れた。

「君はこわくないのかい、ロックオン。僕はこわい。血塗られた両手で得たものが、ほんとうに僕にとって価値あるものなのか。僕の願いはほんとうに叶うのか」

「―――恐くないっていったら嘘になるな。けどお前のいうとおり俺だってもう止まれやしない。信じて進むしかないだろう。賽は投げられた」

「ああ、そう、そうだよね。あとはもう進むしかないんだ。時計の針は決して巻き戻らない。けれどいったい何を信じればいい?」

「信じるものがないのか、アレルヤ」

「今の僕のそばには、いない」

「だったら、俺たち、否、俺を信じろ」

「君を?ロックオン」

「ああ、俺は決してお前を裏切らない」

「守れない約束はするものじゃないよ・・・」

「何故そう決めつける、俺はそんなに信用ならないか?」

「君が悪いわけじゃない。僕がひとりでいることに慣れすぎたせいだ」

「だったら、これからふたりでいることに慣れればいいだろ」

「はは、まるで熱烈な愛の告白だね」

冗談めいた口調で苦笑するアレルヤの唇に、ロックオンは沈黙する。常に回り続ける口が動かないとは一体全体どういう了見だ。沈黙する必要など何処にもないはずだ。軽く笑って流せばいい。「愛しているよ、アレルヤ」なんつってな。流せないのは何故だ。

「ロックオン?」

馬鹿こら女みたいに首を傾げるな二十歳になろうという男がする仕草じゃないだろうでもまあかわいいからいいか。

 

かわいい?

 

賽は投げられた

 

 

07/10/18

 

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